- 補助金を活用してEC化に取り組みたいけど、成功事例はある?
- 食品ECは難しいと聞くけど、実態を知りたい
食品メーカーに特化したコンサルティング事業を手掛けている当社では、最近このような相談が増えています。
EC市場が大きく普及した中で、「食品は相性が悪い」とされてきました。
その理由としては、
- 近場のスーパー・コンビニのほうが便利
- 直接手にとって選べない
- 配送にコストが掛かる
といったデメリットが大きかったためです。
しかし、コロナ禍による巣ごもり需要によって、食品ECは徐々に普及しています。事実、コロナ禍でも売上を伸ばした食品メーカーは、ECによって販路拡大に成功しました。
国の補助金事業によって、中小食品メーカーもEC化に挑戦しやすい環境が整っています。ここでは、食品メーカーがEC化に補助金を活用すべき理由を解説します。
食品業界のEC市場規模
経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、食品EC化率はとても低いことが分かります。
以下は、物販系分野における国内BtoC-EC市場規模順に並べた表です。
参照:
経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」
分類 | 2019年市場規模(億円) | EC化率 |
衣類・服装雑貨等 | 19,100 | 13.87% |
生活家電・AV機器、PC・周辺機器等 | 18,239 | 32.75% |
食品・飲料・酒類 | 18,233 | 2.89% |
生活雑貨、家具、インテリア | 17,428 | 23.32% |
書籍、映像・音楽ソフト | 13,015 | 34.18% |
この表からも分かる通り、食品・飲料・酒類の市場規模は、物販系の中でも3番めの大きさを誇ります。しかしながら、EC化率はわずか2.89 %となっており、他の分野と比較してあきらかに低い数値となっています。
食品メーカーは補助金をEC化に活用すべき理由
食品メーカーで補助金を何に活用すべきか迷われているならば、EC化に活用することをおすすめします。事実、事業再構築補助金の採択結果を見ると、食品メーカーの多くがEC化を目的に申請し、採択を受けていることがわかります。
事業計画名 | 事業計画の概要 |
ECサイトと宅配による北海道の食材を使用した冷凍ケーキの販売事業 | コロナ禍の影響で来店客数が減少する中、北海道産の食材を活かした冷凍ケーキを長年培った製菓技術で開発・製造しコロナ禍で外出を控えている市内近郊の消費者に宅配にて提供。又、ECサイトを活用して北海道の食に関心のある方にも幅広くアピールして新規顧客の獲得を目指す。 |
地元食材を利用した食料品を個人向け商品としてECサイト等で販売を展開 | 当社は60年以上味噌を製造卸しを行ってきましたがコロナ禍で売上が減少しており、今後事業を継続及び再構築するにあたり、個人向け向け商品の開発及び扱いを新たに増やし、また地元食材の活用とECサイト等直接販売を行うことで売上増と法人化を目指します。 |
きくらげの環境にやさしい6次産業化~将来の7次産業化を見据えて~ | 環境にやさしい方式によるキクラゲの生産・加工・販売を行う。完全国内生産による安心安全で栄養価の高い商品を提供する。既存の資源を有効活用しつつ高齢者や障害者の雇用を維持・促進し、地域雇用と産業の活性化に貢献する。ポストコロナを見据えたECサイトによる販売も促進する。 |
なぜ食品メーカーはEC化が求められるのか、その理由を開設します。
少子高齢化に伴う人口減少による影響
元々、食品業界のEC比率が低かった要因は、「近場で購入するから」「直接選びたいから」といった消費者の理由から、商店街・スーパー・コンビニなどの実店舗が主流でした。そのため、地方の食品メーカーにとっては地産地消が基本であり、地元の人がメインの顧客となります。
しかし、国内は少子高齢化が深刻化しているため、地産地消だけに頼ってしまうと、収益は下がる一方となります。
大手量販店に依存しない収益モデルの構築
大手量販店の傘下に入りプライベートブランドの製造を行う企業もあります。確かに大手量販傘下に入ることで、製造量は安定しますが、そこでは厳しい要求を求められることになります。製造規格なども厳密に決まっているため、オリジナルを打ち出すことをも難しく、さらに先述したように将来的な人口減少により、一部地域の店舗撤退のリスクも考えられます。
下請け構造が経営的に苦しい立場に置かれることは、自動車産業などを見ても明らかです。そのため、大手量販に依存しない収益モデルを自社で構築する必要があります。
コロナ禍による消費者需要の変化
コロナ禍により消費者ニーズに変化が起きています。人との接触機会が減り、オンラインでのコミュニケーションが増えたことで、出張手土産や歳暮・中元などのギフト需要が減少しました。代わりに需要が増えたのが、自家需要です。在宅時間が長くなることで、自宅贅沢をする人や、巣ごもり需要によるファミリーサイズ商品・手作りキット商品などが伸びています。
これらの商品はECとの相性も良いため、ネットショップでの売上が堅調に伸びています。
これからの食品販売は遠隔地から呼び込む必要がある
これまで食品業界は地産地消が基本とされていたため、地元・近場に住む消費者がメインでした。しかし、これからは遠隔地から顧客を呼び込む必要があります。
例えば一昔前には、どこの町にお豆腐屋さんがありました。商店街に並ぶ、豆腐屋さんに「お豆腐一丁ちょうだい」と言って買ったものです。
しかし、保存技術・輸送技術が発達したことで、工場で大量生産・全国配送ができるようになりました。パッケージ化された豆腐は賞味期限が長く、さらに大量生産により低価格で販売できるため、消費者もスーパーから買うようになりました。その結果、町の豆腐屋さんはその姿を消していきました。
しかしながら、少子高齢化により町のスーパーや郊外の大型モールも苦戦を強いられています。地域にお年寄りしかいなければ、食品の消費量自体が少なくなります。そのため、これからの食品販売は地域だけに焦点を当てるのではなく、遠隔地や海外などに目を向けて顧客を取り込む必要があります。
食品ECに向いている食品とは
ここまで、食品メーカーが食品ECを行うべき理由について解説しました。それでは食品ECに向いている食品とはどのようなものがあるでしょうか。おすすめの食品としては以下のようなものがあります。
- レトルト食品
- 冷凍食品
- 惣菜加工品
- 高級洋菓子・和菓子
- 日本酒・ウイスキー
特に、自宅需要を狙った高単価商品(自宅贅沢・SNS映え商品)や、巣ごもり需要を狙った手作りキット・調味料などはEC化向きといえます。
特に、日本酒・ウイスキーなどは、海外で人気が高いので海外に販路を拡大するのも有効です。
中小食品メーカーが食品ECを行う際のポイント
中小食品メーカーが食品ECを行う際に注意すべきポイントがあります。ECといっても、なんでもかんでもインターネットで販売すれば上手くいくものではありません。インターネット上に実店舗を持つということなので、事前の戦略が非常に重要です。
生鮮食品は食品ECに向かない
生鮮食品は食品ECに向きません。なぜなら、新鮮野菜などはスーパーなどで直接目に触れて選びたいという需要があるため、地域のスーパーなどで買うからです。また、自社で生鮮食品を販売する場合、輸送コストも掛かるため収益化が難しくなります。
その土地でしか手に入らない食べ物であれば(ブランド米など)、ある程度需要は見込めるかもしれませんが、同じような生産者がたくさんいる場合は自社独自の付加価値を付けなければ、売上を伸ばすことは難しくなります。
大手ECサイトに依存しない
ポータルサイトなど大手ECサイトに商品を出品する方法がありますが、出品手数料が取られるうえ、色々と制約なども多くなります。そもそも自社でEC運営しているわけではないので、補助金獲得も難しいでしょう。
ターゲットはだれか、自社の強みはなにか、同業他社と比較してどのような強みがあるかなど、事前に市場調査を行った上で、EC販売向けの商品開発と独自のECサイトを立ち上げる必要があります。
中にはWebサイトを立ち上げれば、勝手に商品が売れると考えている人もいますが、それだけで売れるほど食品ECは甘いものではありません。
配送料・手数料が発生しても利益が取れる商品を開発する
食品ECの普及率の低さに、配送コストの発生があります。購入側も配送料を気にする方は少なくありません。そこでおすすめなのが、食品EC向けの高単価商品を開発・販売することがあります。たとえば商品価格1000円のものに対し送料600円かかれば高く感じますが、10000円の商品に対し送料600円が掛かってもそこまでネックにならないでしょう。
配送料・手数料が掛かっても利益が取れる商品を開発することで、ECの収益を高めることができます。
補助金を活用した食品EC成功事例
当社がこれまでに支援を手掛けた企業の中で、補助金を活用した食品EC成功事例を1つご紹介します。
背景
元々飲食店だったお客様がコロナ禍で売上が大幅にダウンしたため、新たなビジネスモデルを模索されていたところで当社にご相談いただきました。
ビジネスモデル
店舗で作った料理を冷凍保存し、ネット通販で販売するといったレトルト商品の開発・販売をおこないました。例えば、冷凍鍋料理セット、冷凍餃子セット、冷凍唐揚げなどがあります。ファミリー世帯の巣ごもり需要を狙い、地元食材をふんだんに使ったECオリジナル商品を開発。パッケージデザインを今時のお洒落なデザインにするとともに、オリジナルECサイトを作成し、全国に向けて発信しました。
費用感
レトルト殺菌機/包装機:600万円
ECサイト制作費:250万円
商品開発外注費:100万円
当社では、事業計画書作成におけるアドバイスから、補助金採択後の実務支援(Webサイト作成、流通手段の獲得など)まで一貫してサポートしました。
この他にも当社では食品メーカーのEC化を支援した事例が多数あります。
まとめ|中小食品メーカーは補助金を活用してEC化を実現しよう
今回は、中小食品メーカーは今こそEC化に挑戦すべき理由と、食品ECを始める際の注意点まで解説しました。
時代の流れにともない、今までのやり方では今後中小食品メーカーは衰退してしまいます。コロナ禍や少子高齢化にともない、消費者行動は大きく変化しています。
今までのやり方の延長ではなく、時代に合った新しいやり方に挑戦することが求められています。特に国としても補助金事業により、中小企業の事業再構築を支援しています。
またとないチャンスですので、ぜひ活かしてみてはいかがでしょうか。もしやり方がわからない方や、現在の事業にお悩みを抱えている経営者の方などはお気軽に当社までご相談ください。
現在補助金獲得セミナーも随時開催していますので、まずはそちらからお申し込みください。